小さきアークスの小さな願い - シュン
2015/06/29 (Mon) 22:56:17
▽PL
参加したのはいいけど7鯖人いなかった!
ということで人が増えるかチャレクエのRPイベントがあるまでSS書いたり誠実にアークス活動することにしました。興味を持ったそこのあなた!次キャラは是非7鯖に…え?変態多いからやだ?あ、ハイ。
Re: 小さきアークスの小さな願い - シュン
2015/06/30 (Tue) 09:27:32
美しい海岸の景観を派手にぶち壊すように僕は全力疾走していた。大型ダーカーを背にして。
「なんでこんなとこにいるの~!?」
叫び声が木霊するが残念ながら返事をする声はなかった。
数分前に事は遡る。
「さあさあ!僕と勝負するニャウ!」
何回も僕に挑んできてはいつも同じ方法で倒されている時空を超えてやってくるニャウとかいう面倒なエネミーが目の前に現れた。
僕はかわいいものが好きだけどこのエネミーはなぜか好きになれない。まあエネミーを好きになるのが普通ありえないけれど。
いつも通り瞬殺して探索に戻ろうとした僕の耳に通信が飛び込んできた。
「ニャウが撤退…の影響で空間が歪んでいます。強力な敵性存在、来ます」
「…え?」
何が来るのか確認しようとした矢先、自分の背後で大きなものが着地するような音がした。振り返るとそこには大型ダーカー、ゼッシュレイダの姿が。
…ここで冒頭のシーンに戻る。
というかニャウ、なんでダーカー呼んでるんだ。迷惑すぎるよ。
実はこのエネミー、すこし苦手だった。まずウォンドが弱点部位に届かない。法撃を撃ち込んでいるけど今一決定打に欠ける。
あと速いから避ける間も無く吹き飛ばされる。それで死なないのだからフォトンに感謝。
「なんて考えてる場合じゃない!」
緊急時に頭が冷えて分析できるのはいいけど、これは勢いでどうにかするしかない!
そう考えてゼッシュレイダに向き直ると、お得意のダーカーテレポートで追いついてきた敵がしっかりと僕に狙いを定めてくる。
僕は巨大な相手の傍をすり抜けるようにして近づく。相手が爪で殴ってくるけどすれすれで避ける。
「それっ!ラ・グランツ!」
相手の頭目掛けてチャージしたこのテクニックを『連射』した。
僕はラ・グランツをカスタマイズして相手を混乱させるのは難しくなるけどチャージを短く済むようにしている。だから連発!
すぐにフォトンを使い果たすけど、すぐさま後ろに回って殴る!小槌がヒットしたところが秘められた法撃力で光の爆発を起こす。輝いてとても綺麗。
…いやだから詩的な表現してる場合じゃないって。
相手の攻撃が激しくなってきた。こっちも避けつつグランツを撃ち込むのが精一杯。
このまま時間をかけたらどこかでミスするかも…。
「よし!守りたいモノを守るための…力を!」
僕の隣で常時浮いててサポートしてくれていたマグが光輝く。フォトンブラストってやつだ。
顕現したそれは相手の足を目掛けて突撃する。バランスを崩した敵が背中から倒れた。
一気に近づいて小槌で容赦なく叩く!一瞬起き上がるような動作をしかけたけどその前にトドメの一撃を叩き込んだ。
…ふう。
思わず溜息を漏らす。アークス本部からのエマージェンシートライアル報酬を確認するとその場に座り込んだ。
…プロのアークスはこれを1分もかからず沈ませると聞いたことがある。テクターはパワーが足りないとこもあるけれどもっと強くなれる筈だ。
「もっと頑張らないと…」
「頑張ってにぃーちゃんは何すんねん?」
「そりゃあ強くなってみんなをサポート出来るように…ってわっ!?」
飛び起きて横を見ると小さな貝に入ったような奴がいた。慌ててチャージなしでバータを撃つ。相手はすれすれで避けた。
「ちょおま危なっ!?待て待て待て待てストップストップ!俺はエネミーやない!ここの原生住民やっちゅーの!!」
「急に横に現れて…なんの用事?」
とテクニックをチャージしたまま言う。
「いやずっと居ったからな!?あのデカくて速い奴が出てきたときから居ったからな!にぃーちゃんが気づかなかっただけや!」
「…」
とりあえずチャージをキャンセルして相手に向き直る。
「…で、なんの用事?」
「態度そのまんまかい!…まあええわ。
にぃーちゃん『強くなりたい』言うだよな?」
「言ったけど…」
「なんでや?」
「いやだからみんなをしっかりサポートするためだけど…」
僕がそう言うと原生住民は少し考え込んでからこちらに背を向けた。
「ま、それならええねんけどな。なんや近頃強おなるためだけにここに来る奴が多いからなぁ」
「…別に普通じゃないの?」
「強おなんのは目的やない。手段や。それを履き違える阿保おが多いからなぁ」
…確かにそういうアークスも多い。エコー先輩は「戦いたいと思ったらそれは病気」とか言ってたかな。
上層部の組織改編があってからアークス全体も丸くなったけどそういう人はいる。
「まあにぃーちゃんも気いつけや」
「…ってそれ言いに来ただけ!?」
僕が大きな声を出すと相手は慌てて逃げ出した。凄い速さで。
…時間は持っていかれたが疲れは取れた。僕は奥地に進んでいった。
「さあさあ!僕と勝負するニャウ!」
『ニャウの出現を確認!面倒だとは思いますが対処をー』
「…プリギッタさん」
『はいなんでしょう?』
「他のアークスに任せて逃げていいですか?」
『…いいですよ。次はお願いしますね』
「さあ!もっと熱くなるニャウ!」
Re: 小さきアークスの小さな願い - シュン
2015/07/13 (Mon) 22:23:14
最近、アークス内に流れる空気、それに僕は嫌な感覚を覚えていた。
エルダー復活のときのような不信感ではない。新マザーシップ移行時の混乱でもない、もっと根本から違うもの。
ずっと初期からあった、慢性的な雰囲気。空気。
「お前もう手に入れたか?あの強力なエネミーが落とすって噂の業物」
「いいやまだだ。他の個体が持ってるかもしれないから許可の有効期限が消えるまで『狩る』けどな」
…。
「あーもー!あの強化屋腕悪すぎんだろ!」
「まあまあ、『強くなるため』には仕方ないだろ?」
「まあな、他の奴らに遅れたくないしな」
… …。
「やーっと限界まで能力解放認められたよ」
「おめでとさん。でもそんなのスタートラインだからな。『強くなるため』の前段階でしかないからな」
… … …はぁ。
いい加減にしろ、と普段自分が言うことのないような口調になりたくなる。
みんな履き違えている。僕らアークスは『強くなる』為に戦ってるんじゃない。全惑星の民や原生民を守る為に、ダーカーをダークファルスを、果ては深遠なる闇を倒す為、平和を手に入れる為に戦ってるんだ。
その為に戦力を増強するためにアークスの数を増やし、互いに磨き合うために強くなってるんだ。
目的と手段が入れ替わり、「強くなる」ために「敵を倒す」状態になってる。
磨き合う為に導入されたイベントや制度も尽く逆効果になっている。
結果だけを見て、過程を無視する。「倒す」という過程が目的であるにも関わらず。
かくいう僕も、Teはアークスの能力解放の限界値まで強くなっている。でもそれは、ダーカーを倒す為、他の人を守る為だ。強くなるのが目的じゃない。
…なーんてことを思いながら、任務へと向かう。
惑星ウォパルの海底施設。ルーサーが過去に実験を行ってた場所だ。
最奥地に巣食っているエネミーを目指して探索してる最中だった。
人影が僕を見つけると駆け寄ってきた。
「アークス始めてはや数年。いつまで続くこの戦い……
こんにちは、パティです」
「あ、こんにちはー」
説明不要、アークスの情報屋パティさんが現れた。
「……急にどうしたのパティちゃん。率直に言って気持ち悪いんだけど?
あ、どうも、ティアです。」
「どうも」
そしてお約束の如く相方のティア登場
「なーんかさ、半年くらい前にも言った気もするけどさ、みんな強くなることそのものが目的になってない?」
「…パティちゃんにしては惜しい。前に言ってたのは戦うのが目的になってるってことね」
「そうだっけ?まあいいや。
平和にするのが私たちの目的。その為に戦うのが手段。で、その為に強くなるのが手段の手段。悪化してない?」
「恒久的な戦いに疲れてるのか、新人アークスが履き違えているのかわからないけど、競い合う為だけに強くなってる。ダークファルスを撃退するだけの力を手に入れたアークスは、目的そっちのけで力を求める」
僕が考えていたことをこの二人も気づいていた。何人かのアークスは既に分かってるんだ。
「貴方は大丈夫?貴方も強いけれど、間違っちゃだめだよー?」
「僕は大丈夫。この空気は前から感じてた」
「ならいいけど…。
ほらパティちゃん行くよ。任務の邪魔になるでしょ」
「へ?ああ、うん!じゃあまたねー!」
慌ただしく二人は去っていった。
この力の使い方は間違えない。間違っちゃいけない。それが出来ないなら、この力は持っちゃいけない。
僕は、そう思うんだ。